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ゆべし(熊本県)

ルーツは郷土の保存食。ゆずの風味ともちもちの口当たりが美味

熊本では、古くはご飯のおかずや酒の肴として食されてきた“ゆべし”。もともとは保存食として作られていたといわれ、当初はゆずの中身をくりぬいたところに、米粉と味噌やごま等を混ぜて蒸したものを詰めて干したものだったという。このゆべしがお菓子として売られるようになったのは明治の初め。職人が工夫と改良を加えて作り上げたものが原型になり、さらに改良されて現在のゆべしになったようだ。?薄い山吹色に色付いたもっちり炊き上げられた“ゆべし”は、ゆずの風味がほんのり香る優しい味。歴史が作り上げた味を楽しみたい。

柚餅子(ゆべし)は、全国的に広く知られる和菓子ですが、熊本では特に菊池市と人吉・球磨地区で製造されており、それぞれ製法や材料が異なります。

菊池市の柚餅子は、うるち米ともち米の粉にすりおろしたゆずの皮、味噌、砂糖を混ぜて、竹の皮で包んで蒸すお菓子です。この柚餅子は、ゆずの風味とわずかながら味噌の風味が感じられ、控えめな甘さと素朴な味わいが特徴です。

一方、人吉・球磨地区の柚餅子は、ゆずの中身をくり抜いて容器にし、中に味噌、ピーナツ、ごま、しょうが、唐辛子、小麦粉と調味料を混ぜて詰め、蒸してから天日干しして熟成させます。このバージョンは、塩分と辛味に加えてゆずの皮の苦味も感じられ、お茶うけや山仕事のお弁当のおかず、焼酎のつまみとして楽しまれます。

柚餅子に使われるゆずは、黄色く色づいたものが選ばれ、11月頃からつくり始められます。

歴史と文化に関連して、柚餅子は、かつて米どころとして有名だった菊池平野で、米の収穫時にできるくず米を有効活用するために生まれた保存食でした。南北朝時代に栄えた菊池一族は、柚餅子の保存性と飽きがこない特性に注目し、兵糧として使用していたと言われています。現在の形になったのは明治時代に入ってからで、元々は熊本京町から菊池へと移り住んだ津島屋又平が、柚餅子を商品化するために改良しました。そして、昭和40年代に菊池温泉の開発に伴い人が集まり、土産物として人気を博しました。現在では菊池市の名物となり、和菓子店が古典的な製法で柚餅子を作り続けています。

人吉・球磨地区では、多くの家庭がゆずの木を持ち、余剰のゆずを無駄にしないために柚餅子として加工し、保存食として利用してきました。

柚餅子の製造方法は地域によって異なります。菊池市では、もち米粉、味噌、すりおろしたゆずの皮、一味、黒砂糖を水と混ぜ、耳たぶの固さまでこねます。その後、竹の皮に包んで約1時間ほど蒸します。竹の皮は防腐作用があるとされています。

人吉・球磨地区では、ゆずの中身をくり抜いて容器にし、中に味噌、ピーナツ、ごま、しょうが、唐辛子、小麦粉と調味料を混ぜて詰め、その後、ネットに入れて約2週間ほど天日干しして熟成させます。昔は「わらつと」と呼ばれる包みに入れて1か月ほど軒先に干していました。

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ゆべし(熊本県)

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