江津湖は、熊本県熊本市東区から中央区にかけて広がる美しい湖で、上江津湖(かみえづこ)と下江津湖(しもえづこ)に分かれています。住宅街に囲まれながらも、豊かな自然とレジャー施設が共存しており、市民の憩いの場としても親しまれています。湖は、自然環境や生態系の保全が進められており、多様な動植物が生息する場所でもあります。
江津湖は、熊本平野の北部に位置する緑川水系の加勢川によって形成された河川膨張湖です。上江津湖は湧水が豊富で、地下水が湖に流れ込んでいます。奈良時代から乾地化が進み、慶長年間には加藤清正が江津塘を築くことで湖が形成されました。現在は、水前寺江津湖公園として整備されており、自然保護と市民のレクリエーションの場として機能しています。
上江津湖は、自然豊かな環境の中でスイゼンジノリなどの貴重な動植物が生息しています。湖には「中の島」という小島があり、複数の橋が架けられており、市民が湖の左右岸を行き来することができます。また、貸しボートなども提供され、訪れる人々に親しまれています。一方、下江津湖の一部は埋め立てられ、熊本市動植物園として活用されています。
江津湖は、都市の中にありながら豊かな自然が残されています。水温は年間を通じて19~20℃に保たれており、さまざまな生物が生息できる環境が整っています。
江津湖の水中には多様な水生植物が繁茂しており、淡水魚をはじめ、渓流魚や海産魚など豊富な種類の魚類が生息しています。確認されている淡水魚だけでも28種類に及びます。これには、アユ、ウナギ、コイ、アブラボテなどの在来種のほか、オオクチバスやカダヤシなどの外来種も含まれています。
江津湖周辺は多くの鳥類が飛来する場所でもあります。特にサギ類やカモ類のほか、渡り鳥も多数飛来し、バードウォッチングのスポットとしても人気があります。アオサギ、カワセミ、コサギ、マガモなど、さまざまな鳥が観察されており、季節ごとの景色が楽しめます。
江津湖の植物相は非常に多様で、気候の変化が和らげられるため、北方系から南方系までさまざまな植物が見られます。特に、スイゼンジノリは貴重な植物として注目されており、その保護活動も行われています。こうした植物は湖の生態系を支え、多くの生物にとって重要な環境を提供しています。
江津湖周辺には住宅街が広がっていますが、文化施設やレジャー施設も数多く存在します。特に、上江津湖右岸には民営の貸しボート屋があり、市民が自然を楽しむための施設として利用されています。水上レジャーだけでなく、湖畔を散策するための親水空間も整備されています。
下江津湖の左岸には、72,000平方メートルを埋め立てて開園した熊本市動植物園があります。この動植物園では、水辺の動物たちも観察でき、江津湖との自然な調和が図られています。
江津湖全体が水前寺江津湖公園として整備されており、水前寺成趣園から下江津湖南端まで遊歩道が続いています。特に、下江津湖左岸の広木地区には親水空間が設けられており、湖の美しい風景を楽しみながら散策することができます。
江津湖周辺には、周囲の自然と調和した建築物がいくつかあります。その中でも特に目を引くのが、水前寺江津湖公園管理事務所と上江津湖畔のトイレです。これらの建築物は、熊本アートポリスプロジェクトの一環として設計され、周囲の景観を損なわないデザインが施されています。
水前寺江津湖公園管理事務所は、広木地区に位置し、周辺環境に配慮した意匠が特徴です。屋上緑化も行われており、休憩所としても利用されています。設計は牛田英作とキャサリン・フィンドレイが担当し、1999年に竣工しました。
上江津湖左岸には、公衆トイレも設置されています。このトイレは、湖を見渡せるように設計されており、増水対策として床面が上げられています。日田兆が設計を担当し、1989年に竣工しました。
江津湖は、公共交通機関や車でのアクセスが便利です。最寄りの公共交通機関としては、熊本市電神水交差点停留場が上江津湖に近い場所にあり、徒歩でアクセスできます。また、熊本市動植物園へ向かう場合は、動植物園入口停留場が便利です。バス路線も充実しており、九州産交バスや熊本都市バスが江津湖周辺を通っています。
車で訪れる場合、国道57号(熊本東バイパス)が上江津湖と下江津湖の間を通過しており、アクセスが容易です。下江津湖南端の広木地区には大型駐車場も完備されているため、車での訪問にも対応しています。
江津湖は、熊本市の都市部にありながらも豊かな自然が広がり、貴重な動植物が生息する重要なエリアです。市民にとっての憩いの場であると同時に、環境保護や自然観察の場としても多くの役割を果たしています。豊富なレジャー施設や親水空間、周辺の文化施設もあり、訪れる人々にさまざまな楽しみを提供しています。四季折々の自然の美しさを感じながら、江津湖でのひとときを楽しむことができるでしょう。