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トンカラリン

トンカラリンは、熊本県玉名郡和水町にある謎に包まれた隧道(トンネル)型の遺構です。地元では重要な史跡として知られ、熊本県指定の史跡に指定されています。この隧道は、考古学的に重要な意義を持ちながらも、その用途や歴史については様々な説があり、明確な結論は出ていません。

トンカラリンの概要

トンカラリンは、江田船山古墳(国の史跡)がある清原(せいばる)台地に位置し、全長は約464.6メートルにも及びます。この遺構は、自然の地隙と人工の石組み暗渠から構成されています。トンカラリンという名称は、隧道に石を投げ込むと「とんからりん」という音が響くことから由来しています。

考古学者の吉村作治氏は、トンカラリンと古代エジプトのピラミッドにいくつかの共通点があると指摘しており、特に石積みが布石積みという日本では珍しい工法であることを挙げています。この工法は、古代エジプトのピラミッドでも使われているものであり、その点でも注目されています。

トンカラリンの構造

トンカラリンの構造は、自然の地隙部分と石組暗渠部分に分かれています。地隙部分は自然の裂け目に石で蓋をしたもので、石組暗渠部分は内部に階段状の造作が見られるものの、非常に狭く、大人が屈んでも通れないほどの幅です。この独特の構造は、単なる用水路とは考えにくく、その用途については現在でも議論が続いています。

建造目的と諸説

トンカラリンの建造目的については、いくつかの説が唱えられていますが、いまだ定説はありません。代表的な説として排水路説信仰遺跡説道教由来説古代朝鮮由来説などがあります。しかし、これらの説のいずれも決定的な証拠に乏しく、謎の遺跡としての地位を保っています。

1974年に熊本県教育委員会が現地調査を行い、1978年には「近世の排水路」との報告書を発表しましたが、これには矛盾点が多く、排水路説と信仰遺跡説の両方を検討すべきだと結論付けられました。さらに、2001年には再調査が行われ、排水路としての機能に疑問が残ることから、再び「謎の遺跡」として扱われることとなりました。

新たな発見と調査

2001年の再調査では、第2のトンカラリンが発見され、さらには第3、第4のトンカラリンが埋蔵されている可能性も示唆されました。この調査によって、トンカラリンが単なる近世の遺構ではなく、より広範な歴史的背景を持つ可能性が高まりました。

松本清張とトンカラリン

作家松本清張は、1975年にトンカラリンを訪れ、『魏志倭人伝』の一節からトンカラリンが邪馬台国の卑弥呼の鬼道に関係するとの説を唱えました。松本清張のこの説によって、トンカラリンの存在は広く世間に知られるようになり、その後、多くの研究者や歴史愛好者が訪れる場所となりました。

トンカラリンシンポジウム

2001年10月29日、菊水町(現在の和水町)で熊本県県民文化祭の一環としてトンカラリンシンポジウムが開催されました。このシンポジウムでは、当時までの研究が総括され、筑波大学名誉教授井上辰夫氏や熊本県文化財保護審議会委員古閑三博氏などが出席しました。

井上辰夫氏は「トンカラリンは俗から聖、死から生への転換を象徴する儀式に関連している可能性がある」と述べ、トンカラリンが信仰的な意味を持つとする見解を示しました。また、古閑氏と飯田氏は「地裂は地震ではなく、雨でも引き起こされる可能性がある」として、排水路説を否定しました。大田氏は「出土遺物を検討した結果、トンカラリンの使用は江戸時代の初期を下限とし、上限は中世である」と述べました。

広島のトンカラリン

熊本県以外にも広島県東広島市の安芸津町三津信僧に同名の隧道型遺構が存在しています。この広島のトンカラリンは、熊本のトンカラリンにちなんで命名されたもので、構造や用途は異なるものの、同じように興味深い遺構とされています。

交通アクセス

公共交通機関でのアクセス

トンカラリンへは、玉名駅もしくは新玉名駅から九州産交バス山鹿温泉行きに乗車し、「菊水ロマン館前」で下車します。そこから徒歩約5分(約400メートル)の場所に位置しています。

車でのアクセス

車で訪れる場合は、九州自動車道菊水インターチェンジから約2.7キロメートルの距離です。駐車場も整備されており、アクセスは比較的便利です。

Information

名称
トンカラリン

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