旧細川刑部邸は、熊本県熊本市中央区の熊本城三の丸跡に位置する武家屋敷です。この建物は、熊本県指定重要文化財に指定されており、熊本城の歴史的景観を支える一部として高い価値を持っています。細川刑部家(子飼細川とも呼ばれます)は、細川内膳家(砂取細川)と並び、細川藩の一門家臣家の一つで、江戸時代には長岡姓を名乗っていました。
旧細川刑部邸は、江戸時代の上級武家屋敷の典型として、非常に格式の高い建築様式を誇ります。建坪は約300坪に及び、重厚な唐破風の玄関は、重臣や当主専用の入口として使われました。また、入側造りの表御書院は、大名邸宅の特徴を色濃く残しています。
主屋には「春松閣」と呼ばれる2階建ての居室があり、ここでは日常生活が行われていたとされています。1階には「銀之間」という別室もあり、格式のある空間が広がっています。
屋敷内には茶室「観川亭」があり、こちらには書斎が付属しています。この茶室は、主に静寂を楽しむ場所として使われ、庭園を眺めながら茶をたしなむ空間として機能していました。他にも御宝蔵や台所といった付属施設が揃っており、武家の生活を支える機能が充実しています。
この屋敷は、熊本藩主であった細川忠利公の弟、細川興孝が刑部家を興した後、熊本市中央区東子飼町に建てられた下屋敷です。建築様式は書院造で、主屋や別棟の茶室が含まれ、主屋の一部は2階建ての居室「春松閣」となっています。
1985年(昭和60年)には熊本県の重要文化財に指定されました。1993年(平成5年)には、東子飼町から現在の三の丸地区に移築され、熊本城跡の歴史的価値を高めるため、2005年(平成17年)に特別史跡熊本城跡に追加指定されました。
2015年(平成27年)8月、台風による強風で、屋敷を囲む塀が約70メートル倒壊するという被害が発生しました。さらに、2016年(平成28年)の熊本地震では、主屋や茶室などが被災し、土壁の一部が剥がれ落ち、屋根瓦のずれなどが確認されました。その後、耐震診断が行われ、主屋は耐震不足と判定されました。
このような背景から、2023年(令和5年)には一時的な公開が行われた後、復旧工事と耐震補強工事が計画され、2028年度(令和10年)中に再度一般公開が再開される予定です。
旧細川刑部邸は熊本県熊本市中央区古京町3番1号に位置しており、熊本城の観光と併せて訪れることができる便利な立地です。
開館時間は季節によって異なります。4月1日から10月31日までは8:30から18:00まで、11月1日から翌年3月31日までは8:30から17:00までとなっています。休館日は年末の12月29日から12月31日です。
入館料は、高校生以上が300円、団体割引の場合は1人240円、小中学生は1人100円で、団体割引は80円です。また、熊本城との共通入場券を使用する場合、高校生以上が640円、小中学生が240円で入場可能です。ただし、共通入場券における団体割引の適用はないため、事前の注意が必要です。
旧細川刑部邸は、2023年の一時的な公開後、復旧工事と耐震補強工事を経て、2028年度中に再び一般公開される予定です。この工事により、歴史的な価値を守りつつ、訪れる人々に安全かつ快適な見学体験を提供することが期待されています。