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大慈寺(大慈禅寺)

(だいじじ だいじぜんじ)

大慈寺は、熊本県熊本市南区に位置する曹洞宗の寺院で、その正式名称は「大梁山大慈禅寺(だいりょうざんだいじぜんじ)」です。開山は寒巌義尹(かんがんぎいん)という僧で、弘安元年(1278年)に創建されました。曹洞宗の九州本山として歴史的に重要な位置を占め、現在も修行道場として僧堂が置かれています。本尊は釈迦三尊であり、坐禅をはじめとする禅の修行が行われています。

寺院の歴史

創建と発展

大慈寺は、後鳥羽天皇または順徳天皇の皇子であったとされる寒巌義尹によって開山されました。寒巌義尹は、曹洞宗の開祖である道元禅師に参禅し、2度にわたる中国への渡航(入宋)を経験した後、博多の聖福寺を経て肥後の地に定住しました。この地では地頭である河尻泰明の帰依を受け、弘安元年(1278年)に大慈寺を創建しました。

寺は亀山法皇の勅願寺となり、正安2年(1300年)には本堂が完成しました。その後、大慈寺は九州における曹洞宗の拠点として繁栄し、多くの僧侶が修行に訪れました。しかし、戦乱や度重なる火災に見舞われ、そのたびに再建されてきました。

火災と再建の歴史

大慈寺は、幾度も火災に遭遇し、そのたびに再興されています。正平年間(1346年 - 1370年)に一度焼失し、大雲化縁という僧により再建されました。その後も、中世を通じて何度も焼失と再興を繰り返しており、永正17年(1520年)には戦乱によって再び焼失しました。天文9年(1540年)にも戦乱に巻き込まれ、焼失した後、天文15年(1545年)に再建されました。

近世においても、享禄2年(1629年)に再興されましたが、その後も火災に見舞われ、明和5年(1768年)にも焼失しています。さらに、明治時代初期には廃仏毀釈の影響で荒廃し、昭和9年には河川改修工事により境内の一部が削られました。しかし、昭和期には澤木興道という高名な禅僧が滞在し、坐禅の指導を行いました。その後、昭和60年に再興され、現在に至っています。

大慈寺の伽藍と建築

主要な伽藍

大慈寺の伽藍は、幾度もの再建を経て現在もその姿を保っています。以下は大慈寺の主要な伽藍です。

山門

大慈寺の山門は享保5年(1720年)に建立されました。風格のある山門は、長い歴史を感じさせる佇まいで、訪れる人々を迎え入れます。

経蔵

大慈寺の経蔵は延享3年(1746年)に建立されました。経蔵には数々の仏教経典が納められており、その価値は計り知れません。

境内の見どころ

臥竜ヶ池

大慈寺の境内には、臥竜ヶ池と呼ばれる美しい池があり、豊かな自然と調和した禅寺らしい風景を楽しむことができます。池の周囲には四季折々の花々が咲き、訪れる人々の心を和ませます。

俳人種田山頭火の句碑

境内には俳人種田山頭火(たねださんとうか)の句碑が建てられています。この句碑には「まったく 雲がない 笠をぬぎ」という句が刻まれており、昭和27年(1952年)に山頭火を偲ぶ人々の手によって建てられました。山頭火を出家させた望月和尚がこの寺に在住していたこともあり、山頭火ゆかりの地として多くの人に親しまれています。

羅漢さん

羅漢さん」と呼ばれる区域には、さまざまな表情を持つ羅漢像が配置されており、その中には訪れる人々の心を映し出すかのような像もあります。羅漢さんの近くには種田山頭火の句碑があり、静かな佇まいの中で禅の心を感じることができます。

大慈寺の文化財

重要文化財(国指定)

大慈寺には、多くの国指定重要文化財が保管されています。これらの文化財は、大慈寺の歴史と曹洞宗の伝統を伝える貴重な遺産です。

梵鐘

大慈寺には、弘安10年(1287年)の銘がある梵鐘(ぼんしょう)があり、国指定重要文化財に指定されています。この梵鐘は、その響きの美しさと歴史的な価値から、多くの参拝者に愛されています。

寒巌義尹文書

寒巌義尹文書は、寒巌義尹が記した書簡や詩文であり、彼の思想や教えを伝える貴重な資料です。この文書は大慈寺の歴史と曹洞宗の教えを理解する上で非常に重要なものとされています。

伽藍草創偈

伽藍草創偈は、大慈寺の創建に際して記されたものであり、その歴史的価値から国指定重要文化財に指定されています。

寒巌義尹自賛像(絹本)

寒巌義尹自賛像(絹本)は、永仁己亥の年に描かれた寒巌義尹の肖像画であり、自らの賛が添えられています。曹洞宗の精神を象徴するこの絵画は、大慈寺の誇りとされています。

その他の文化財

大慈寺には、大渡橋幹縁疏(建治2年5月日)や大渡橋供養記(弘安元年7月晦日)、宝塔幹縁疏(正応2年5月16日)、発願文(永仁元年12月8日)など、多くの貴重な文書が所蔵されています。これらの文書は、大慈寺の歴史とその役割を伝える重要な資料です。

熊本県指定有形文化財

大慈寺には、いくつかの熊本県指定有形文化財も保管されています。

宝塔と層塔

大慈寺には、元仁元年(1224年)の銘がある宝塔や、永仁5年(1297年)の銘がある層塔があり、いずれも熊本県指定有形文化財に指定されています。また、記年銘のない層塔や宝篋印塔(ほうきょういんとう)も県の有形文化財として保存されています。

大慈寺の魅力

坐禅会と一般公開

大慈寺では、坐禅堂において毎月第三日曜日に坐禅会が開かれています。この坐禅会には一般の方も参加可能で、禅の世界を体験することができます。また、随時一般公開も行われており、訪れる人々に禅寺の静寂と心の安らぎを提供しています。

夏目漱石の俳句

大慈寺には、文学的なゆかりもあります。夏目漱石は「大慈寺の山門長き青田かな」という俳句を詠んでおり、この句は大慈寺の風景と静けさを巧みに描写しています。漱石の句は、多くの文学愛好者にとっても大慈寺を訪れる理由の一つとなっています。

アクセス情報

交通手段

JR鹿児島本線川尻駅から徒歩25分でアクセス可能です。また、桜町バスターミナルより九州産交バスの「川尻バイパス・大慈禅寺経由南区役所・宇土・松橋方面行き」に乗車し、「大慈禅寺」バス停で下車後、徒歩5分の場所にあります。

その豊かな歴史と文化、自然に囲まれた境内は、多くの参拝者や観光客に愛されています。曹洞宗の教えに触れ、心静かなひとときを過ごすには最適な場所です。

Information

名称
大慈寺(大慈禅寺)
(だいじじ だいじぜんじ)

熊本市・山鹿・菊池

熊本県