熊本県上益城郡山都町に位置する五老ヶ滝は、矢部四十八滝の一つで、地域の豊かな自然景観を代表する滝です。滝はかつて轟川(とどろきがわ)と呼ばれており、上流から流れ落ちる水が壮大な風景を生み出しています。滝のすぐ上流には通潤橋があり、観光地としても知られています。
五老ヶ滝の特徴は、豊富な水量と50メートルの落差です。滝壺や周囲の断崖も広大で、滝の水は阿蘇カルデラ由来の溶結凝灰岩を削りながら流れ落ちています。矢部四十八滝の中でも、千滝、聖滝、越早滝、福良滝と並んで最大級の滝です。
この地域は、国の重要文化財である通潤橋と共に公園として整備されており、訪れる人々が自然の美しさを楽しめるように、周囲には散策路が設けられています。滝のそばには吊り橋があり、滝壺まで降りずとも、滝全体を眺めることができるようになっています。また、時間帯によっては滝にかかる虹を見ることもできます。ただし、歩道は濡れやすく滑りやすいので、訪れる際には注意が必要です。
五老ヶ滝の下流にはダムが築かれており、その先で笹原川と合流します。かつてこの地域には田吉橋という石橋も存在していましたが、今では見ることができません。
五老ヶ滝へのアクセスは以下の方法があります。
通潤橋(つうじゅんきょう)は、熊本県上益城郡山都町にある石造単アーチ橋です。2023年(令和5年)9月25日に、橋や土木構造物としては全国で初めて国宝に指定されました。
通潤橋は嘉永7年(1854年)に、白糸台地へ水を送るために建造されました。この台地は阿蘇山からの火山灰が積もっており、雨水がすぐに地下に浸透するため水不足が問題でした。地元の惣庄屋、布田保之助が中心となって計画を立案し、石工の技術を駆使して完成した橋です。
通潤橋は川の谷に架けられた水路橋で、長さ78メートル、幅6.3メートル、高さは20メートル以上に及びます。アーチの支間は28メートルで、肥後の石工技術の高さを証明する重要な建造物です。
橋の中央には放水口が設けられており、灌漑の少ない農閑期には観光目的で放水が行われます。放水の目的は、石管内にたまった泥や砂を取り除くためですが、最近では観光客がその放水風景を見に訪れることも多くなっています。
通潤橋とその用水路は、農林水産省の「疏水百選」にも選ばれており、白糸台地の棚田景観とともに「通潤用水と白糸台地の棚田景観」として国の重要文化的景観にも指定されています。現在でも、用水路は地域の農業を支えており、通潤橋は地域の誇りとして守られています。
通潤橋へは五老ヶ滝からも近く、徒歩で訪れることができます。観光客は放水時間を確認し、滝や橋の景観を楽しむことができます。