永尾神社は、熊本県宇城市不知火町永尾にある歴史ある神社です。この神社は、旧社格である村社として地域に根付いており、不知火海(八代海)を望む海中に鳥居が建っていることで多くの参拝客に知られています。この景観は、海と自然が織りなす壮大な風景の一部で、訪れる人々に静寂と神聖な空間を提供します。
永尾神社の創建は、713年(和銅6年)に遡り、元命天皇の勅願により国の平和と安定を祈るために建てられました。社伝によれば、かつて「海童神」がはるか彼方から「えい」(エイという海の生物)の背中に乗ってこの地にやってきたと伝えられています。この地に鎮座することになった背景には、永尾という地名にまつわる興味深い伝説が存在します。
永尾神社が鎮座する北側の鎌田山から見える地形が、不知火海側から見ると「えい」が山に向かって横たわっているように見えることが由来となっています。神社が建てられている場所は「えい」の尾の位置にあたり、このことから「永尾(えいのお)」と呼ばれるようになりました。また、別名で「剣神社」とも呼ばれているのは、「えい」の尾が剣のように鋭く見えることからです。
さらに古い伝説では、巨大な「えい」が海童神を乗せ、不知火海から神社の鎮座地である宇土半島を越えようとしましたが、巨大な網によってその行く手を阻まれ、そのままこの地に留まったとされています。その後、「えい」の尾の先に神社が建立されたと言われています。この伝説に基づき、周辺の地名には「網津」「網引」「網田」など、網にまつわる名前がつけられたとされています。
地域の氏子の中には「えい」を神の眷属として崇め、食べない風習があることも知られています。この神社では、特に胃腸病平癒のご神徳があるとされており、多くの信者が訪れています。海を望む神聖な場所に建つ鳥居が、神社の神秘性を一層引き立てています。
永尾神社では、毎年旧暦の8月1日に「八朔祭」が行われます。この祭りは、不知火が出現する日と重なるため、神社が位置する小高い丘からは多くの参拝客が不知火を目にするために訪れます。眺めの良い境内は、祭りの日には特に賑わいを見せ、神聖な雰囲気の中で地域の人々や観光客が一体となる重要な行事です。
永尾神社では以下の神々が祀られています。
永尾神社では、夏と秋に例大祭が行われます。これらの祭りは地域の人々にとって大切な行事であり、神社への信仰が色濃く反映されています。
夏の大祭は、八朔の日(旧暦の8月1日)に行われ、前夜には「不知火・海の火まつり」が宇城市不知火町の松合新港や永尾神社一帯で開催されます。この祭りは、地域全体が神秘的な雰囲気に包まれ、幻想的な光景が広がります。
秋の大祭は毎年11月15日に行われ、地域の人々が収穫への感謝を捧げ、神に祈りを捧げる重要な行事です。穏やかな秋の日に行われるこの祭りも、多くの参拝者を迎えます。
永尾神社は、その歴史的な背景や美しい景観から、観光スポットとしても注目されています。海中に建つ鳥居や、不知火海を望む絶景が、訪れる人々に深い感動を与えます。また、八朔祭や不知火の出現など、特定の日にしか体験できない神秘的なイベントも観光客を引き寄せる要因となっています。
熊本県を訪れる際には、ぜひ永尾神社を訪れてみてください。神社の静寂な雰囲気と自然の美しさ、そしてその歴史に触れることで、心が癒されることでしょう。