湯前まんが美術館(那須良輔記念館)は、熊本県球磨郡湯前町に位置する美術館です。この美術館は、湯前町出身の政治風刺漫画家、那須良輔の業績を称えて1992年(平成4年)11月に開館しました。那須良輔の作品や、その活動を広く紹介する施設として、多くの人々が訪れます。
湯前まんが美術館の建物は、人吉・球磨地方の郷土玩具である「きじ馬」をモチーフに設計されています。独立した5棟から成り、うち3棟が美術館、残りの2棟が公民館として機能しています。また、この美術館は「くまもとアートポリス」にも参加しており、そのデザインや建築も注目されています。
那須良輔(1913年4月15日 - 1989年2月22日)は熊本県球磨郡湯前村(現在の湯前町)で生まれました。幼少期から絵を描くことに熱中し、多くのコンクールで賞を受賞するなど、その才能を早くから発揮していました。洋画家を志し、1932年に太平洋美術学校に入学。ここで中村不折や石川寅治に師事し、漫画家としての道を歩み始めます。
1938年、那須は従軍記者として中国に渡り、従軍ポスターやプロパガンダ用の伝単制作に携わります。その後、再度召集され、関東軍の司令部にて報道班に所属しました。この経験から、那須は後に政治風刺漫画家としての方向性を明確にし、戦後はその活動を本格化させました。
戦後、那須は熊本日日新聞や毎日新聞に政治風刺漫画を連載し、長きにわたって日本の政治をユーモラスかつ鋭く批判する作品を発表し続けました。特に毎日新聞での連載は、1949年から1989年まで続くという長寿連載となり、日本を代表する風刺漫画家としての地位を確立しました。
那須良輔の死後、彼の遺志を継ぎ、湯前町に「湯前まんが美術館(那須良輔記念館)」が1992年に設立されました。この美術館は、那須の作品や資料を数多く所蔵しており、訪れる人々に彼の生涯と作品の魅力を伝え続けています。
1994年からは、那須良輔の業績を称える「那須良輔風刺漫画大賞」が設立され、現在も多くの風刺漫画家たちにとっての目標となるコンテストとして開催されています。
那須良輔はその生涯で多くの賞を受賞し、1987年には日本漫画家協会賞の選考委員特別賞、1988年には勲四等瑞宝章を授与されています。これらの受賞は、彼の長年にわたる業績と、日本漫画界への多大な貢献を示しています。
那須良輔は、漫画家としての才能だけでなく、釣りや料理にも卓越した才能を持っていました。特に釣りに関しては「名人級」と称され、その腕前は随筆や教則本に記されています。釣りを題材にした随筆集も複数出版されており、漫画家としての活動とともに趣味の世界でも多くの人に影響を与えました。
戦後、那須は鎌倉に移住し、同業の漫画家や作家たちと交流を深めました。特に作家の里見弴とは釣りを通じて親しくなり、『里見弴全集』の月報にも「那珂の庄雑記」を連載するなど、文化人としての側面も持ち合わせていました。
住所: 熊本県球磨郡湯前町1834-1
開館時間: 午前9時30分~午後5時
休館日: 年末年始(12月28日〜1月3日まで)および展示替え期間
入館料:
美術館へのアクセスは以下の通りです:
湯前まんが美術館は、那須良輔の偉業を称えるだけでなく、彼の作品や風刺漫画というジャンルそのものを後世に伝える重要な役割を果たしています。訪れる人々に、日本の風刺文化や那須の生涯を深く知ってもらう場として、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。