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杖立温泉

(つえたて おんせん)

杖立温泉は、熊本県阿蘇郡小国町に位置する歴史ある温泉地で、温泉街の一部は大分県日田市にまで広がっています。この温泉は、泉質が非常に優れているだけでなく、その独特の風情と歴史的背景から、多くの観光客や湯治客を魅了してきました。また、杖立温泉は、地域全体が耶馬日田英彦山国定公園の一部として自然に囲まれ、訪れる人々に豊かな自然との調和を感じさせます。

温泉の特徴

泉質と湧出温度

杖立温泉の泉質は塩化物泉であり、その湧出温度は非常に高く、約100℃に達します。この高温の温泉水は、多くの温泉施設で利用されており、特に冷え性や関節痛、皮膚病などに効果があるとされています。体の芯から温まり、リラックス効果も期待できるため、訪れる人々に深い癒しを提供します。

温泉街と旅館

杖立温泉街は杖立川沿いの谷間に広がり、19軒の旅館が立ち並んでいます。これらの旅館は、大型の高級旅館から、こぢんまりとした家庭的な宿、そして湯治目的の宿泊施設までさまざまです。宿泊客はそれぞれのニーズに応じて、自分に合った宿を選ぶことができ、また、温泉街では「湯巡り手帳」を使って、複数の湯を楽しむことができます。

共同浴場

杖立温泉には、元湯、薬師湯、御前湯、流泉湯、第二自然湯という5つの共同浴場があり、それぞれ異なる趣のある温泉を楽しむことができます。また、足湯のある公園も整備されており、散策の合間に気軽に温泉を楽しめます。共同浴場を巡ることで、地域の温泉文化に触れることができるのも杖立温泉の魅力の一つです。

杖立温泉の歴史

1800年の歴史

杖立温泉の歴史は、約1800年もの長い歴史を誇ります。伝説によると、応神天皇が産湯としてこの温泉を利用したことが開湯のきっかけとされており、その際に使用された源泉は、現在の共同浴場「元湯」付近から湧き出ていたと言われています。もっとも、現在の元湯は別の源泉から引湯されていますが、歴史的な価値は今も色濃く残っています。

杖立温泉の地名の由来

「杖立」という地名には、弘法大師(空海)にまつわる伝説があります。杖を頼りに温泉にやって来た人が、湯治の結果健康を取り戻し、帰る時には杖を必要としなくなる、ということからこの名が付いたと言われています。この由来を表す次のような短歌も伝わっています。

湯に入りて 病なおれば すがりてし 杖立ておいて 帰る諸人 — 弘法大師

また、大分県日田市の地名「津江」と関連があるとの説もあります。地理学者の松尾俊郎は、「津江」という地名が「崖」を意味し、杖立もその由来ではないかと考えています。

文化人との関わり

江戸時代には、熊本藩の御前湯が置かれていた場所としても知られ、現在は共同浴場「御前湯」として一般に開放されています。明治時代以降は、詩人の野口雨情など、多くの文化人がこの地を訪れました。

戦後からの復興と変遷

戦後の昭和28年、西日本を襲った大水害で杖立温泉も大きな被害を受けましたが、その後迅速に復興し、「九州の奥座敷」として栄えました。しかし、近年は温泉客の嗜好の変化に伴い、隣接する黒川温泉などが注目を集める一方で、杖立温泉は一時期衰退の傾向にありました。しかし、歴史的な町並みや蒸し湯といった特色を活かした町づくりが進められ、徐々にその魅力を取り戻しつつあります。

こいのぼり祭り

杖立温泉の大きなイベントとして知られるのが、「こいのぼり祭り」です。この祭りは、4月1日から5月6日までの期間中、杖立川をまたぐように3000匹以上のこいのぼりが泳ぐ姿が壮観で、全国から多くの観光客が訪れます。このこいのぼり祭りは、昭和55年頃に40匹程度のこいのぼりで始まりましたが、年々その数を増やし、現在では杖立温泉の象徴的なイベントとなっています。

アクセス情報

公共交通機関

杖立温泉へのアクセスは、JR九州の阿蘇駅または日田駅からバスを利用することが一般的です。阿蘇駅からは九州産交バス、日田駅からは日田バスが運行されており、それぞれ終点で下車すると温泉街に到着します。また、福岡からは高速バスも運行されており、西鉄天神高速バスターミナルや博多バスターミナルから直接アクセスできます。

自家用車でのアクセス

自家用車を利用する場合、九州自動車道の熊本インターチェンジから国道57号・212号を経由して約63kmの道のりです。また、大分自動車道の日田インターチェンジからは国道212号を南下し、約25kmで到着します。温泉街に入る際は、杖立トンネルではなく、その脇にある旧道へと進むことをお勧めします。

Information

名称
杖立温泉
(つえたて おんせん)

阿蘇・黒川(黒川温泉)

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