国造神社は、熊本県阿蘇市一の宮町手野に鎮座する歴史深い神社です。阿蘇神社の北方に位置していることから「北宮」とも称されています。延喜式内社のひとつであり、旧社格は県社に位置づけられています。
国造神社は、阿蘇神社の主祭神である健磐龍命(たけいわたつのみこと)の子である速瓶玉命(はやみかたまのみこと)を主祭神とし、その家族を合わせて祀っています。速瓶玉命は、阿蘇の地を開拓し、農業や植林を指導した偉大な人物とされており、古くから地域住民の信仰を集めています。
現在の社殿は、寛文12年(1672年)に熊本藩第3代藩主細川綱利(ほそかわつなとし)によって再建され、長い歴史を持ちながらも、その姿を現代に伝え続けています。神社は、古代からの重要な歴史的背景を持ち、阿蘇地域における中心的な存在として、地域社会や観光客にも広く親しまれています。
国造神社は、延喜式神名帳に記載されている肥後国の四座のうちの一つとして非常に古い歴史を持っています。四座のうち他の三座は、健磐竜命神社(現阿蘇神社)、阿蘇比咩神社(現阿蘇神社)、疋野神社であり、この中でも特に重要視されてきました。
『肥後国誌』によると、崇神天皇の時代に速瓶玉命が肥後国造に任命され、景行天皇18年(88年)に国造神社を修復し、祭典を整えたとされています。父である健磐龍命と共に阿蘇の地を開拓し、農耕や植林などの基盤を築いたと伝えられています。
国造神社の主祭神は速瓶玉命であり、彼の妃である雨宮媛命(あまみやひめのみこと)やその子供たちを祀っています。速瓶玉命は「国造本紀」によると、初代阿蘇国造であり、地域の発展に大きく寄与した人物です。
国造神社の近くには、速瓶玉命とその妃の墓とされる古墳があります。
これらの古墳は、6世紀後半の横穴式石室を持つ円墳で、巨大な安山岩や阿蘇溶岩の切石で構成されています。その巨大さや歴史的価値から、熊本県を代表する古墳として知られています。
国造神社では、阿蘇地域に伝わる農耕祭事が執り行われており、これらの祭事は国の重要無形民俗文化財に指定されています。これらの祭事には、歌い初め、春祭り、おんだ祭り、風祭り、眠り流し、田の実祭などが含まれ、地域の農業と深く結びついた伝統行事として今も続けられています。
かつて境内には「手野のスギ」と呼ばれる巨大なスギの木が生育していました。このスギは1924年(大正13年)に国の天然記念物に指定され、長い間その雄大な姿を保っていましたが、1991年の台風19号による被害を受け、折損してしまいました。その後、文化財保護審議会により2000年に天然記念物の指定が解除されました。
国造神社の例祭は、毎年7月26日に行われています。この日は、速瓶玉命を中心とした神々に感謝を捧げ、地域の安寧と繁栄を祈る日として大切にされています。
国造神社の境内には、いくつかの摂社・末社が鎮座しています。これらの社もまた、国造神社と同様に地域の信仰を集めています。
国造神社へのアクセスは、JR九州豊肥本線の宮地駅からタクシーで約15分の距離にあります。また、九州自動車道の熊本インターチェンジからは約45kmの距離にあり、車でのアクセスも可能です。