天草の有明町は日本一のタコの町。タコ街道には自慢のタコ料理を食べさせてくれるお店が軒を連ねている。その中でも「たこ飯」は大人気で有明を訪れる人たちのほとんどが食べるメニューだ。「たこ飯」の材料は天草地方で採れるたこを利用するが、新鮮な地たこを刻んで使う。海岸の夏の風物詩である風に揺れる干しダコも、刻んで炊き込みごはんにする。その味は「タコだけなのに、どうしてこんなに風味豊かなの?」と驚くほどである。
足を広げて吊るされ、潮風に揺れる「干しダコ」は、ちょっとユーモラスな天草市有明町の夏の風物詩。梅雨明けから9月ごろまで、天気の良い日に3~4日天日干しすればでき上がる。スルメのようにそのままで食べることはなく、もどして料理に使われる。漁はタコ壺を海に沈める昔ながらの方法で行われている。タコはとれる場所によって肉質が異なるが、天草地域では弾力があって歯応えのいいマダコが一年中よくとれる。有明海の長崎側でとれるものは脂が少なく、干しダコに向いているという。
干しダコはもともとはタコのとれる量が少ない冬のための保存食だったが、旨味が凝縮されていい味がでるので、「たこ飯」には干しダコを使うことが多い。干しダコを水でもどして小さく刻み、ごぼうや人参、ひじきなどを具材につくるが、各家庭や地域によってタコや具材に味付けしたものを後からごはんに混ぜる方法と、一緒に炊き込む方法がある。干しダコをもどした水をだし汁として使うので、調味料は醤油や酒、砂糖とシンプル。天草市五和町ではタコの風味を損なわないよう具材も干しダコのみでつくる。
天草市は特産のタコで町おこしも行われており、国道324号線の有明区間は「天草ありあけタコ街道」と名付けられている。タコ街道沿いに自慢のタコ料理を出す店が並び、観光客や地元の人にも人気。
主な伝承地域
天草地域
主な使用食材
マダコ、米、ごぼう、ひじき、人参